読書感想文


月と貴女に花束を3 鬼神猛襲
志村一矢著
メディアワークス 電撃文庫
2000年6月25日第1刷
定価530円

 「月と貴女に花束を2 妖龍の少女の続刊。
 月森冬馬は「久遠の月」と呼ばれる指輪の力を使い、狼に変身する力を取り戻す。しかし、この力を使うと、体に病巣ができ、死に至るほどのダメージを与える。彼は深雪に心配をかけまいと真相を知らせず、新たな戦いに挑む。新しい敵は戦うことによって無限の力を得ることのできる鬼、陣内。真相を知った深雪は、自らの命を投げ出して陣内に立ち向かい、冬馬を助けようとするが……。
 第1巻のラブコメタッチが、ここにきて完全に姿を消してしまい、アクション中心の純愛小説になってしまった。そのストレートさは、私には少々気恥ずかしい。しかしシリーズの過程でこうまで変わってしまうのも、いくら新人の作品とはいえ統一感がなく、疑問を感じる。編集サイドのアドバイスはなかったのだろうか。
 鬼の設定は面白いアイデアだし、人狼を統べる「院」の「長」が実はその敵たちの「長」でもあるというのも意表をついている。ただ、「長」がなんのためにそんな無駄なことをしているのか、本巻の時点では理解しにくい。残り2冊で完結する予定らしいので、そこらあたりの整合性をどうとっていくのかが鍵になりそうだ。

(2000年7月2日読了)


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