「虚無回廊II」の続刊。単行本未収録分がとうとう一冊にまとまった。
〈SS〉内部に出現した「森」。そこには知的生命体が情報化されて集まり、〈SS〉の正体について論議が始まろうとしていた。人工実存HE2たちもそこに加わる。そこでは、宇宙はビッグ・バンと同時に生命が生じる仕組みになっていた、あるいはわれわれには観測のできない裏の宇宙がありそこから生じた〈SS〉も一つの生命体だ、などという推論が続々と披露される。
正直なところ、私には一読しただけでは手に負えない理論構築で、何度も同じ箇所を繰り返して読み直した。そして、その全貌が漠然とでもつかめ始めたとき、その発想のスケールの大きさとホラの吹き方に唖然としてしまった。これこそハードSFの醍醐味。
雑誌の休刊という事情があったとはいえ、これだけの作品が10年近くも放り出されていたという事実に怒りすら感じてしまった。
次巻以降は新たに書き起こされる部分となる。新しい科学知識を投入して書かれるだろう続編に、早くも期待はふくらんでいるのだ。
(2000年7月6日読了)