読書感想文


EDGE2〜三月の誘拐者〜
とみなが貴和著
講談社X文庫 ホワイトハート
2000年6月5日第1刷
定価550円

 「EDGE〜エッジ〜の続刊。腕利きの心理捜査官大滝錬摩は、今回は連続誘拐犯の捜査にかり出される。犯人が残した痕跡から、彼女は犯人が連続誘拐事件と関係のないことを確信する。一方、誘拐された少女ハルカは殺人衝動のある青年とともに、川に投げ捨てられた人形を追って東京湾に向かっていた。いったんは警察に保護されたハルカだったが、両親に引き取られる直前に逃げ出し、川に沿って歩き始める。人形と、そしていっしょに探してくれる約束をした青年を求めて……。
 「自分」を確認するために殺人衝動を抑えきれない男と、「自分」を理解してもらえない幼女の微妙な交流をきめ細かに描きこんでいる。その本筋に大滝錬摩のトラウマをうまく織りこんでいるので、シリーズとしても統制が取れていて、読み応えがある。
 錬摩の相棒で知能障害のある宗一郎の設定が、本巻でよりくわしく描かれているが、そのSFテイストと現実味のある事件との間になんの違和感もない。これはなかなかすごいことだ。
 小説の構成、展開としてはヤングアダルトの枠をはみ出しているように感じた。この内容なら新書ノベルズでも通用する。やはりこの作者のSF短編が読みたい。ヤングアダルトというジャンルの制約を考えると、大人向けの媒体で作品を発表する方がこの作者のためには適しているのではないだろうか。

(2000年7月18日読了)


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