「傀儡迷走」に続く、シリーズ第4巻。
長い眠りから目覚めた菜樹。鬼道衆との闘いで傷ついた海生。二人は来るべき新たな闘いに備え、リハビリを続ける。しかし、鬼道衆は傀儡回しを敵と定め、執拗に攻撃してくる。自衛に徹する海生の命令をよしとしない傀儡回しの彩里は傀儡を手荒に扱いながら攻撃を仕掛け、海生の怒りをかう。一方、五鬼衆の一人である曠は配下として操らなければならないはずの〈宇津保〉に情を寄せるようになり、五鬼衆の筆頭の頴から裏切りに対する罰を与えられる。菜樹は鬼道衆の攻撃に対し、〈宇津保〉本来の力である神降ろしに成功し、これを撃退する。頴の野望とは何か、そして、〈宇津保〉や傀儡回しのとるべき道は……。
自己の意志を明確にしはじめた曠を、頴がなぶるようにして従わせ、勝利したと思っている傀儡回したちをも実は手玉にとっているという展開は、本シリーズがピカレスク小説としての一面を持っていることを明らかにした。単に善対悪の対決という単純な構造に陥らず、それぞれの一族の存在意義を賭けた闘いという点が物語に奥行きを与えているように思われる。
エゴイストとして描かれている彩里が、そのエゴの根拠を見失い茫然としてしまうところなど、芸が細かく、込み入った人間関係を描き出すだけの力量をこの作者が備えていることを示していると思う。
いよいよ次巻で完結ということなので、どう着地するか注目したい。
(2000年8月9日読了)