読書感想文


浪花少年探偵団2
東野圭吾著
講談社
1993年12月3日第1刷
定価1359円

 「浪花少年探偵団」の続編で、完結編。
 内地留学中のしのぶセンセだが、事件は彼女に吸い寄せられるように起こる。中学生になった田中や原田は卒業しても相変わらずしのぶセンセのところにやってきて、事件解決に協力する。内地留学の期間が終わり、新しい学校で担任を持ったしのぶセンセの前に難問が……。
 短編6編で構成された第2巻は、しのぶセンセが学生の身分ということもあって比較的自由に動ける設定であり、事件解決にも冴えを見せているが、前巻に比べるとしのぶセンセ自体にはつらつとしたところがあまりないように感じられた。中学生の田中や原田も担任とやんちゃ坊主という関係でなくなった分、距離感が違うのでいくぶん元気さに欠けるようにも思う。もちろん肩の凝らない痛快小説であることには違いはないのだが。
 それだけに、最終話で学校に帰ってきたしのぶセンセが再び輝きを増して見える。それが作者の狙いだったのかもしれない。「教師は生徒がいてナンボ」という世界であることは、現職の私が常々実感しているところなのだが、作者もそのあたりをよくわかって書いているのではないだろうか。
 ともかく、いったん終わらせたシリーズを再開するというのはそれだけ大変なことなのだと感じた。
 なお、本書は文庫化にあたって「しのぶセンセにサヨナラ 浪花少年探偵団・独立編と改題されているのでご注意を。

(2000年8月10日読了)


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