読書感想文


此君の戦姫
紗々亜璃須著
講談社X文庫ホワイトハート
2000年8月5日第1刷
定価570円

 「寒椿の少女」に続くシリーズ第3巻。
 仙女にしてあげようと誘いかける美貌の若者。娘たちはその言葉に惹かれて彼とともに仙人のいる洞窟へついていく。春麗もまたその誘いに心動かされる少女であった。しかし、彼女の前に少年と見間違えるばかりの娘、瑤姫が現れ、それが本当かどうかを確かめようとする。実は瑤姫は西王母の娘で、仙女になる資格のある道姑だったのだ。意に反してさらわれた春麗と、それを追う瑤姫。しかし瑤姫は仙界を出るときに仙術を使わないと誓いを立てていたのだ。瑤姫は春麗を助けることができるのか。そして、少女たちを誘う仙人の正体は……。
 貧しい少女たちの虚栄心につけこむ仙怪という設定をうまく使っている。虚栄心にとらわれた少女たちの哀れさや醜さを余すことなく描き、嫌悪感すら感じさせるところに、本書がただの活発な道姑の冒険談に終わっていないと感じさせるものがある。
 人間と仙人の埋めがたい距離について主人公たちに真正面から考えさせるところなどに作者の心持ちのよさが伝わってきて好ましい。前巻同様いくぶん典型的なスタイルが目につき、この作品でなければというほどの強烈な印象を与えるわけではないのだが、その心持ちのよさが記憶のどこかに残るシリーズだと思う。

(2000年8月10日読了)


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