読書感想文


まぼろし曲馬団
新宿少年探偵団
太田忠司著
講談社ノベルス
2000年8月5日第1刷
定価780円

 「鴇色の仮面」に続くシリーズ第6弾。
 新宿にいきなり深海魚が登場し、人々を襲う。また、謎の舞踏集団が現れ「まぼろし曲馬団」と名乗って街に警告のチラシをまく。新たな敵に対して戦いを挑む新宿少年探偵団だったが、謙太郎は蘇芳の力を借りて、マッドサイエンティストへの道を歩み、響子は武道の奥義をつかむために修業に励み、これまでとは違った雰囲気をまとうようになる。壮助はそんな仲間たちに違和感をもちながらも、新たな敵を倒そうと夜の新宿に向かうが……。
 今回は、敵の目的が明らかになり、これまでよりも物語はスケールアップした。そして、敵や蘇芳をも呑み込もうとする大きな黒幕が存在することも匂わせる。
 作者があとがきで書いているとおり、乱歩へのオマージュではもはやなく、新たな段階に入ってきたということになる。善とも悪ともつかないもの同士が大きな存在の掌で踊っているという構造になってきたのだ。
 こんごは、壮助が新宿少年探偵団の仲間たちと訣別し、孤独な戦いを続けていくという展開になりそうな予感がする。その時に、新宿少年探偵団が新たな形で再び団結していくのか、黒幕の筋書き通りにことが運んでいくのか。そこらあたりに注目して次巻を待ちたい。

(2000年8月27日読了)


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