読書感想文


フリーダムズ・チャレンジ−挑戦−
アン・マキャフリイ著
公手成幸訳
ハヤカワ文庫SF
2000年8月31日第1刷
定価900円

 「フリーダムズ・チョイス−選択−」の続刊で、完結編。
 いよいよザイナルたちボタニー居住者の、エオス人への反撃が始まる。ザイナルはキャテンに戻り、キャテン人の中でエオス人に反抗の意志を持っている者を集め、叛乱の計画を練る。ザイナルの息子たちをマサイ人の集落で育てていたが、そこでアルカロイド系の薬物を吸い込んだ息子は瀕死の状態になる。エオス人の寄生しているキャテン人にこの薬物を吸飲させれば一気に殲滅できると考えたザイナルたちは、ボタニーへの集中攻撃をたくらむエオス人たちの会議に潜入する。
 エオス人の油断につけこんだとはいえ、こう簡単にザイナルたちが勝利してしまうとカタルシスがない。ザイナルの弟はエオス人に寄生されているのだが、その関係からくる葛藤などがあれば面白いだろうに、それもない。エオス人の生き残りが逆襲してきたら面白いだろうと思うが、あっさり逃げてしまい大団円となる。
 面白いなと思ったところは、キャテン人は実はエオス人がその宿主とするために猿人から人工的に進化させた存在だというところ。猿人そのままのラッシ、簡単な知能を持ったドラッシ、高度に進化させたエマッシと身分差を作り使役するという設定である。それを地球人がどう感じるかという場面があってもよかったと思うが、クリスたちは特にそれについて疑問視するわけでもなくごくあっさりと受け入れてしまう。
 結局本書のテーマは「植民地経営に失敗したら、原住民に叛乱を起こされる」ということだと私は思ったのだが。

(2000年8月29日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る