読書感想文


昏き神々の宴
封殺鬼 21
霜島ケイ著
小学館キャンバス文庫
2000年10月1日第1刷
定価524円

 「隠月の冠者」に続くシリーズ第21巻。
 鹿島神宮に起きた異変を解決するため、「中央」はその存在を否定していたはずの鬼を「本家」から派遣するよう要請する。その影には星見の術者、高良の進言があった。しかし、鹿島で弓生と聖を待っていた「中央」の御師は非協力的な態度をとる。鹿島神宮の境内は湿地と化し、蛇たちが大量発生している。かつて高天原の天津神に征服された国津神が復活しようとしていたのだ。蛇神と対決する聖に起こった異変とは……。そして「中央」から追われる身となった二人の鬼の運命は……。
 これまでは周囲の信頼のもとに戦い、力を出すことができた鬼たちが、本巻では信頼のない中で本意ではない戦いをしなければならない。いわば前方と背後の両方に敵がひかえている形である。その試練をどう切り抜けていくかが見どころの一つ。
 また、天津神と国津神の因縁をそこにからめることにより、重層的なドラマを生みだしている。被征服者である国津神の怨念を天狗が利用するという展開が見どころである。国津神の正体というテーマ自体は目新しいものではないが、いわば同じ被征服者である鬼たちと戦わざるを得ないという心理の動きがこのシリーズならではの「哀しみ」を導き出している。
 追われる身となった弓生たちがこれからどうなっていくのか、まだまだ目を離せない展開が続く。

(2000年9月7日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る