死刑が廃止され、失業が罪となった社会が舞台。木田福一は失業し、追放罪の刑に処せられることになった。大阪城の北側にある追放地に入れられて、生きて出てきたものの姿を誰も見たことはない。食べるものすらないその中で、彼は鉄を食する人々に出会い、彼らの一員となり、彼もまた食鉄族「アパッチ」となる。鉄を食べることにより彼らの体質は変わり、体細胞が金属でできた新しい人類となった。日本全国に同時に発生した食鉄人種は、彼らを閉じこめておこうとする政府に反抗し、ついにはクーデターを起こす。アパッチたちは勝利するのか。そして、日本の運命は……。
本書は差別に対する反対をSF的設定で描いたものなのではないかと思う。「アパッチ」のヒントはもちろん「日本三文オペラ」に描かれた屑鉄拾いの「大阪アパッチ」である。実在のアパッチは国家権力の前にその姿を消したわけだが、本書のアパッチたちは政府に対して戦争まで仕掛ける。そこから読みとれるのは、異物を排斥する体質の社会に対するストレートな風刺である。
アパッチ族の体質の設定にハードSF的な方法論を認めることができるし、日本の政治構造の欠陥を鋭く追究する論理的な展開も見られるし、独特のユーモア感覚にしても、この作者の第一長編には、後の小松作品に見られる特徴が早くも出揃っているのだ。作者の気負いも感じられるし生硬な部分もあるが、やはり黎明期の日本SFを語る上で見逃すことのできない問題作であることには違いあるまい。
(2000年8月19日読了)