「モンキー・マジック」の続巻。
本巻では子母川と火焔山のエピソードを作者独自のタッチで潤色している。その川の水を飲んだ者は男女の別にかかわらず妊娠してしまうという子母川(原典では「子母河」)のエピソードでは、孕んだ子どもをおろす井戸水を独占する下級の仙人、如意真仙とのやりとりをコミカルに描く。妖怪でない如意真仙を退治することのできない悟空が苦しむ様が原典とはまた違った味を出している。年中火山活動をしているために近辺が常に猛暑に見舞われる火焔山のエピソードでは、山の火を消す芭蕉扇を預けられている妖怪少年、羅薛尉(原典では「羅刹女」で牛魔王の妻)と牛魔王の砦を守る玉明芒守(原典では「玉面公主」で女狐の化身)の主人への鞘当てを描いている。
如意真仙が沙悟浄に惚れて道中に加わったり、牛魔王の小姓たちがいいところを見せたいと張り合うところなど、ボーイズ・ラヴ系を意識した作りになっているように思うが、そこらあたりの機微は私にはわからない。
ストーリー自体は例によってテンポよく進み、原典のアレンジもうまくいっている。ただ、本シリーズの特徴である満月の夜に妖怪たちが妖怪としての能力を一切失ってしまうという場面がなく、そのためにほんとは女性なのに果術で男性にされている三蔵が子どもを身ごもった場面など、実は女性である男性が妊娠するというあたりの妙味を生かし切れていないように思った。女性に戻ってもその間の三蔵は寝ているだけで面白くならないという判断なのかもしれないが、そこを面白く発展させてほしかった。ここらあたりが限度なのかな。
あいかわらず「ですます」調の言葉の使い方が怪しい。妙に「ですます」を多用するために、そこでひっかかってしまう。次巻こそちゃんとしした言いまわしを使ってほしいものだ。
(2000年9月10日読了)