「陽炎羽交」に続くシリーズ第10巻。
中宮彰子が懐妊。しかし、彰子の父、藤原道長を含む一族を呪う藤原元方の霊は、彰子の夢の中に入り込み、彼女の精神状態に影響を与えてお腹の中で育つ皇子を流産させようとする。姫宮と義明は彰子の夢の中に入り込み、元方の霊を滅ぼそうとする。しかし、元方の霊の背後には、さらに強い力を持った邪神がいた。姫宮に「おまえも我らの仲間だ」と話しかけ心を乱させる。また、義明の求愛にこたえると自分が普通の女性になってしまうことに気がつき、それを怖れる姫宮は、普段どおりの力を発揮できない。姫宮と義明は邪神を祓うことができるのか。そして、二人の間に少しずつ入っていく亀裂の行方は……。
主人公が力をつけていくのに対し、さらにグレードアップした敵が登場するのは大河長編の常道。あまりエスカレートしすぎると熱血少年マンガみたいになってしまいそうで、それだけは避けてほしいところだ。
邪神に同類扱いされる、自分の中の「女」に嫌悪感を示す、今回の姫宮はかなり試練を与えられている感じがするが、それを自力で突き破っていくのか、はたまた邪神として目覚めてしまうのか、後者の可能性は薄いけれど、この試練に立ち向かう姫宮の姿が今後の焦点になっていくのだろう。
本巻には派手なアクションシーンもあり、一気に盛り上がった。クライマックスまであと少しか。これまでのようにいかにもつなぎのエピソードという感じの巻をはさまず、ラストまで真っ直ぐ突っ走っていってほしい。
(2000年9月11日読了)