「レディ・ゴースト」に続くシリーズ第7弾。「獣戦士」編のエピソードに一応の決着がついた。
ムジカと引き替えに「赤の書」を手に入れたアブサルコ一味だが、その数ページが善ノ介たちのもとに残されていることを知り、強敵カスバドは善ノ介ノ命を狙う。彼の弱点は魂をどこかに置き忘れてきた愛娘マハのみ。英国の魔術諜報官シャーロットはマハの身柄を拘束しようとアブサルコの本拠に侵入する。その頃アブサルコは「赤の書」を用いて悪魔を召喚していた。それが自分たちの身の破滅につながるとも知らず……。そして、カスバドと善ノ介の一騎打ちが始まる。勝利の女神はどちらに微笑むのか……。
敵の一味の正体についてかなり書き込まれていて、そのために物語に広がりができた。最強無敵の相手に対し、主人公側が勝負には負けてしまうあたりは納得のいく展開。さらに強い敵の登場を暗示して次巻に引き継ぐところなどは心憎い。
軽く楽しく読める伝奇アクションとして出発した本シリーズも、巻を重ねるごとに物語の世界が広がってきて、次の展開を読ませないようになっている。シリーズ開始当初は祖母サクラと善ノ介の軽妙なやりとりが売り物であったが、本巻あたりではムジカと善ノ介の恋愛感情に焦点が移っている。これは書いているうちにストーリーがふくらんできてこうなったといえるが、主人公が成熟していることを示すものでもあろう。その分サクラの影が薄くなってきているのは寂しいが。
シリーズを続けているうちに構想がふくらみ、作者も予想できない展開になってきているところなど、少年マンガ誌の連載にも似ていて興味深い。
(2000年9月15日読了)