読書感想文


オズのオズマ姫
ライマン・フランク・ボーム著
佐藤高子訳
ハヤカワ文庫NV
1975年11月30日第1刷
定価260円

 「オズの虹の国」に続くオズ・シリーズの第3巻。
 おじさんとオーストラリアへ行く船で海に落ちたドロシーは、オズの国のはずれにある海岸に漂着した。彼女はそこでねじ巻式ロボットのチクタクと出会い、エヴの国の女王とその子どもたちが地底の国ノームに捕らわれていることを知った。おりしも、オズの国の支配者オズマ姫もエヴの女王を助けにノームへやってきていたのだ。ドロシーの旧友のかかし、木こり、ライオンたちとともに……。ノームの王は、置き物に変えてしまったエヴの女王たちを探しだせたら助けてやると約束する。オズマ姫が、そしてかかしが……次々と仲間が失敗していく中で、ドロシーの順番がやってきた。はたしてドロシーは彼らを助け出すことができるのか。
 オールスターキャストで臨んでいながら、登場人物の個性を十分に生かし切っているとはいえないけれど、敵であるノーム王の個性で救われている。自分に余裕があるうちは愛想がよいが、敗色が濃くなると豹変する、その醜さ加減が人間の本質をついていて面白い。
 物語の構成としてはこれまでの2冊よりも比較的完成度が高い。だから、安心して楽しめるといった具合。ドロシーはともかく、前巻では悪戯坊主であったオズマ姫までが優等生タイプであることがネックになっているけれども。

(2000年10月14日読了)


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