「キノの旅-the Beautiful
World-」の続刊。
旅人キノと、人と会話のできる自動二輪車エルメスの旅は続く。その様子を淡々と描いた連作長編という構成は前巻と変わらない。子どものことを思うような言葉を発しながら実は親の価値観を押しつける両親。人々の理解が得られないまま飛行機を作り大空を飛翔しようとする女性。読書を国是とし批評のみ発達した国で創作を志すが理解されない若者。旅人に冷淡と評判であったが、実際訪れると歓待してくれる人々の秘密。
本巻では、国の特殊な設定よりも、個人個人を描いた作品が中心となっている。その分、ファンタスティックな味わいは薄まっているけれど、本書では風刺性をかなり全面に押し出し、皮肉のきいた構成になっている。ただ、その皮肉が前巻よりもストレートに提示されているので、わりと先読みしやすいのも事実。読み進むうちに予測した結末通りに終わると、ちょっと食い足りない気もする。もっとも読者層を考えたらあまりひねりすぎるとついていかれなくなるのかもしれない。しかし、それでは独自の感性を殺してしまうことにもなりかねない。そこらあたり、ちょっぴり気がかり。
しかし、現代的な寓話としてはやはり優れたものがあり、もうしばらくこの路線で書き続け、実力をたくわえていってほしい。
(2000年10月31日読了)