読書感想文


みき&リョウ見鬼ファイル
夢魔の慟哭
後藤文月著
角川ティーンズルビー文庫
2000年11月1日第1刷
定価438円

 「水魔の誘惑」に続くシリーズ第2巻。
 霊を見ることのできる「見鬼」能力のある一橋亮也と、一見女の子のような美少年の霊能者、水城和彦がまたもや霊と関わっていく。本巻では、亮也と同居することになった水城がアパートの下の部屋で起きた殺人事件をその被害者の霊の声を聞いて察知し、警察に届け出る。しかし、被害者の事情にあまりにもくわしい水城にも嫌疑がかかり……。
 本題となる事件については、特に目新しいというところはないが、バブル景気に踊らされた人々の哀れさや不倫関係の危うさなどがよく書かれていると思う。それよりも、本巻の面白さは水城と亮也の描写を楽しむ方が本題ではないかと思われる。
 水城が無防備に霊媒としての能力を他者に見せてしまう不用心な人物であること、亮也が見鬼能力を持つために孤独であったのを癒す水城の優しさなど、二人の性格づけが本巻でほぼ固まったといえるだろう。したがって、シリーズ全体から見れば、かなり重要な役回りをする巻だと思われる。
 本巻でキャラクターの関係などがほぼ説明できたわけであるから、次巻以降はこの設定を生かしたスケールの大きな伝奇アクションになることが期待される。

(2000年11月3日読了)


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