読書感想文


ワイルド・レイン2 増殖
岡本賢一著
ハルキ文庫
2000年10月18日第1刷
定価680円

 「ワイルド・レイン1 触発」の続刊。
 第一ロコンゴを倒したレベル5のサイ能力者、レインの前に次に現れたのは第二ロコンゴである少女、ルルナナであった。彼女は自分の思念ゾーン内にいる者の精神を支配し、神として操ることができる。しかし、その能力が発動するバネとなったものは、自分をいじめた少女に対する憎しみであった。レインはルルナナに人を愛することを教えてその強大な力を発動させないようにするが、彼らを戦わせる意図を持った〈ピエロ〉はルルナナをだまして第三ロコンゴ、モカジャバをその卵から孵化させる。独占欲が強く人を殺すことに罪悪感を持たないモカジャバに対して、レインはどのような方法でその能力の発動を阻止するのか……。
 ここで語られるのは、ヒューマニズムである。愛の意味を知らない幼い精神構造を持つものが初めて人の愛情というものに触れた時に、どのような反応を示すのか。それをSFという舞台装置で描いてみせようとしたものなのだ。
 ただ、アクションを主体としている展開なために、そのヒューマニズムを深く突っ込んでいくところにまではいっていないのが惜しまれる。
 また、前巻に登場した「第一ロコンゴ」と比べると、本巻の「第二ロコンゴ」「第三ロコンゴ」はどのような運動であるのか、少し見えにくいのも気になるところ。どうやら全人類を統合するという目的があるようにも読めるのだが。
 次回完結篇でそれらの全貌が描かれるはず。刮目して待ちたい。

(2000年11月17日読了)


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