深海探査艇がとらえた映像は、80ノットの高速で移動し金属を引き裂き地上では毒素の含まれたガスを発生させる謎の生物であった。体のほとんどを水で構成している「スピード・フィッシュ」と名付けられたこの生物は、急速に増殖しながら北上し、日本の本土に迫ってきていた。対応を迫られる自衛隊。そしてその秘密を探る科学者たちの、怪生物との戦いが始まる。
科学的な設定や政治、経済の状況変化にリアリティを持たせた上で、パニックに陥る人々の姿を様々な角度からとらえている。「ゼウス ZEUS−人類最悪の敵−」の海洋版という感じの作品である。そういう意味では作者の新たなテーマのバリエーションということができるだろう。本書ではどのような形で決着をつけるのか、下巻が楽しみである。
(2000年11月25日読了)