「カナリア・ファイル 猫鬼」に続く、シリーズ第11冊目。新たなエピソードの開幕である。
綾瀬広野との戦いが終わり、平穏な日々を過ごしていた有王だったが、刑事光居の連絡で石と化した浮浪者の見聞を行ったことから、新たな戦いに巻き込まれることになる。「鬼狩」と呼ばれる一族が、「鬼」である橘高芳を襲撃する。「鬼狩」の塚倉乙市は橘高の弟、譲を利用し、彼に接近、橘高の愛するあやめと間違えて耀をさらい、「鬼狩」の里につれていく。橘高もそのために「鬼狩」の里に囚われの身となる。「鬼狩」たちは自分たちが石化するのを防ぐために、鬼の血を欲していたのだ。一方、有王は耀を取り戻すために単身「鬼狩」の里に。有王は橘高と耀を見つけだすことができるのか。「鬼狩」たちと有王の戦いの行方は……。
「鬼狩」の設定は「綾瀬」の設定と同様、その内部の人間関係まで詳細に書きこまれ、正邪善悪の別をつけていない。さらに、これまで積み重ねてきた「カナリア」耀の存在を十分に生かしたものとなっている。「綾瀬」編は少しエロティックな香りがするものたったけれど、今回はどちらかというと凄惨な印象が強く、今後どのような展開になっていくのか非常に楽しみ。このエピソードもこれまで同様重層的な構想になりそうだ。より深みのあるシリーズとなることを期待している。
(2000年12月10日読了)