「双星記 1 千年に一度の夏」の続巻。
惑星アル・ヴェガスの衛星アル・バに侵攻するベルゼイオンの〈宝石艦隊〉。これを迎え撃つのは、広報官から突如抜擢された臨時総司令官ラインバック。しかし、彼は実は傀儡で、彼に指示を与えているのはかつての救国の英雄で既に死亡しているはずのヒロ・リュウガサキであった。リュウガサキは、その脳のみが生かされていて、ベルゼイオンの侵攻計画に対してアル・ヴェガスの一国メッサージュがその頭脳に頼ることにしたのである。
激しい戦いの中で、ランディスバーゲンはなるべく人を殺さずにすむように腐心する。アル・バを占領して民間人を解放しようとしたランディスバーゲンだったが、リュウガサキは、味方もろともベルゼイオン艦隊を根こそぎ爆破してしまおうとしていた。それを知ったラインバックのとった行動は……。
人が死ぬのが戦争、人を殺すのが軍人。それに対して人を殺したくない2人の男が戦闘の指揮をとるという皮肉な設定に、作者の書きたいテーマが現れている。前巻同様、キャラクターに味わいがあり、その雰囲気がストーリーにユーモラスな味付けをしている。少々青臭さを感じさせるところもないではないが、読者対象を考えるとこの程度の理想主義的なところがあってもいのかもしれない。次巻で完結の予定のようだが、ランディスバーゲンの正体やラインバックの変化など、どういった形で着地するのかが楽しみになってきた。
ところで、作者は阪神タイガースのファンなのかな。「ラインバック」「ブロワーズ」「バレンタイン」「ソロムコ」と歴代のタイガースの外国人選手の名が登場人物に使われている。私は作者のファンタジー作品を読んでないのだが、登場人物の名前だけでも確かめたくなってきたぞ。
(2000年12月28日読了)