「誰か『戦前』を知らないか」の続きにあたる「夏彦迷惑問答」第2巻。
本書も若者を相手に昔のことを語るという形。オリンピックなどスポーツ界の欺瞞を暴き、社会主義の〈正義〉にあこがれた人々の心理を語り、真の貧乏について述べた上で現代社会に明るい未来などないと断定する。辛辣な舌鋒は前巻と変わらず、小気味よいくらいだ。
ただ、自分の会社の若い社員を相手に、いかに若者がものを知らないかを揶揄してはいるけれど、この程度の知識や教養しかない者を採用している著者の人物鑑定眼のなさをばらしていることになると思うが。いかにも現代の若者は無知でございという書き方は、かえって著者が自分の知識をひけらかしているような印象を与えて、品性卑しく感じたりもする。
ここで語られている証言は貴重なものだし、わかりやすく楽しい構成になっている。それだけに読み手が暴論にも引きずられていってしまう怖さも感じた。
しかし、近現代の人々の考えかたの源流をとらえるためには身近な視点から語られたこういう証言をよく理解しておかなくては、とも思う。上手に読んで、得た教養を使いこなすことがポイントとなるだろう。
(2000年12月29日読了)