読書感想文


ウィーン薔薇の騎士物語 2 血の婚礼
高野史緒著
中央公論新社 C★NOVELESファンタジア
2000年5月25日第1刷
定価857円

 「ウィーン薔薇の騎士物語 1 仮面の暗殺者の続刊。
 フランツを「薔薇の騎士四重奏団」の第1ヴァイオリンとして売り出そうとするジルバーマン楽団の楽長は、彼のソロデビューに見知らぬ少年から渡されたハンガリーのチャルダーシュを演奏させる。しかし、彼の弾く曲をバックに踊っていた女性が突然死してしまうハプニングが。実は、その曲は吸血鬼を呼ぶ曲として知られていたものだった。吸血鬼の疑いがあるテオドレスク伯爵に招待されたフランツは、一人でブダペシュトへ。そこで待っていたのは、楽譜を持ってきた美少年、アゴンだった。アゴンに連れられてテオドレスク伯爵のもとに行ったフランツの見たものは……。テオドレスク伯爵の正体は……。そして、伯爵の恋人であるコンスタンシアの婚礼の行方は……。
 前作とはうって変わってホラー・ファンタジーの趣がある物語となった。特に音楽と吸血鬼伝説との関わりなど作者ならではの展開となり、これまでの吸血鬼ものとはひと味違った作りになっている。
 退廃的で耽美な雰囲気を出そうとしているけれど、全体に軽いタッチで書かれていることもあり、その雰囲気を十全に出し切れていないのが残念ではある。しかし、フランツという無垢なキャラクターを主人公にしているためか、嫌らしさは感じられないのが長所でもある。ここらあたりのバランスは難しいところ。
 本書で作者はキャラクターものの楽しさを会得したと見え、レギュラーの登場人物にかなり魅力が出てきた。影のある少年もレギュラーに加わり、次巻以降が楽しみ。作者の新境地としてどのようなシリーズに育っていくかに注目したい。

(2001年1月5日読了)


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