「侵略者の平和 第二部 観察」の続刊で、シリーズ完結篇。那國と惑星エキドナの戦いは、エキドナ側のシズノ王女が国王として立ったことにより急展開する。エキドナの軍備を甘く見たテクスカーナ警察軍はシズノ王女の反撃にあい、那國防衛軍はその状況を見て和平の道を探る。那國の人間とエキドナ人との交流も進み、相互理解が深まる中で、どのようなかたちで和解が成立するのか……。
物語自体は和解に向けて落ち着くところに落ち着くのだが、それではただのシミュレーション小説である。ここで作者はSFとしての仕掛けをほどこし、双方の思惑を秘めたまま和解に至るように帰結させる。その手際のよさを買いたい。
本シリーズで展開されるシミュレーションの要素は、戦争と政治の関係という作者が架空戦記で追い求めてきたテーマのバリエーションであるが、そこに人類のルーツというSFならではのアイデアを組み込むことにより、架空戦記ではできないことを描いてみせたといえるだろう。
ただ、全巻を通読してみた場合、その要素が十分こなれ切っているかというと、まだ固さを感じさせる。作者としては初めての長篇SFであるということを考えあわせれば、少し肩に力が入り過ぎているという印象を受けた。
それだけに、次回作ではよりこなれたSFとなることを期待したい。
(2001年1月14日読了)