読書感想文


陰陽寮 四 晴明復活篇 上
富樫倫太郎著
トクマノベルズ
2001年1月31日第1刷
定価905円

 「陰陽寮  参 丹波死闘篇」に続くシリーズ第4作。
 蘆屋道鬼の子をみごもった孔雀は大江山の盗賊に拾われ、行動をともにする。その首領獅子王は、都の浮浪児の鬼道丸、むささび、仁王らとともに大和へ。来流須の長、米利王須を探し、不死の体となったむささびと仁王をもとに戻してもらおうとするのだ。一方、安倍晴明が古代の神、亜弊火武意とともに暗黒の扉を開けて他の世界に行ってしまったため、大和では土蜘蛛族の古代の姿である〈陰〉が再び現れ、暴威をふるい、野獣たちも神の秩序から放たれ、無法地帯となっていた。都では晴明の不在を狙い、藤原道長を陰陽寮の滋丘魚名と春苑善成に呪詛させようとする一派や、神として崇められる徐福の陰謀などが進行していた。混沌とした状況を打開するために、晴明は復活するのだろうか……。
 物語はだんだんと奇怪な方向に進みつつある。土蜘蛛族と〈陰〉のエピソードや、徐福の暗躍などは怪異譚といった趣がある。前巻でスケールを大きくし過ぎ、混沌とした状況になってしまったものをなんとか収めようとしている、そんな印象を受けるが、その手段として人知を超えた怪異を次々と繰り出すものだから、ますますその混沌ぶりが目立っている、そんな感じがする。果たして、下巻でその混沌をどのように収斂させていくのか。その手腕が問われるところだろう。

(2001年1月28日読了)


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