読書感想文


陰陽寮 伍 晴明復活篇 下
富樫倫太郎著
トクマノベルズ
2001年1月31日第1刷
定価800円

 「陰陽寮  四 晴明復活篇 上」に続くシリーズ第5作。
 大和の土蜘蛛族の古代の姿、〈陰〉。湖水の底から引き上げた棺の蓋を開けたとたん、その怨念が巫女の少女、鈴蘭に乗り移り、彼女も〈陰〉に変化してしまう。むささびや鬼道丸たちは土蜘蛛族の〈死者の谷〉へ行き、〈陰〉のさらった少女、杏奈を救い出そうとする。しかし、〈陰〉は強く、彼らの命も風前の灯に。そこに現れたのは来流須の長老、米利王須。彼の持つ小箱の蓋を開ければ、安倍晴明と、そして邪神、亜弊火武意を解放できるかもしれない。はたして晴明は復活するのか。〈陰〉と鬼道丸の戦いの帰趨は……。
 暗黒の扉の彼方に封じられた安倍晴明の復活が本巻の最大の注目すべき点である。作者はあとがきで「ブラックホールに対しホワイトホールがある」という理論を応用したと書く。そういった理論を応用しなければ晴明を復活させられないとする作者の頑固さは好ましいところだ。安易なご都合主義に走らないという宣言なのだろう。
 し、5巻目まで進むと、あちこちにほころびが生じていることも確かで、本書でいくつか矛盾を感じさせた箇所もある。これまでは勢いに乗った形のストーリー展開でそれらの矛盾も気にならないほどになっていたが、本巻でところどころひっかかりを覚えるようになったのは、勢いだけで書き進む段階を過ぎたからだろう。
 まだ未解決の部分や、矛盾点などを続巻以降でどのように整合性のあるものにしていけるのか。ストーリーの盛り上がりと同時に、作者にとっても重要な局面であるように感じられるのである。

(2001年1月28日読了)


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