「皇国の守護者 4 壙穴の城塞」に続くシリーズ第5巻。
〈帝国〉の辺境領姫ユーリアを愛人とした〈皇国〉の天才将校新城。彼は皇国の衆民たちから英雄としてたたえられる存在となる。しかし、これを快く思わない一派や、このことが皇国の秩序を覆すと危惧する一派など、新城をめぐり主導権争いが起こり始める。そんな中で、新城はつかの間の平和を楽しんでいた。が、帝国側もついに反撃に出る。司令官、駒城保胤が苦悩の戦闘指揮をとっているところへ、新城は送り込まれる。かくして新城の平和な日々は終わりを告げ、新たな戦いが始まるのだった。
異世界ファンタジーの設定を舞台に繰り広げられるシミュレーション小説であるが、戦闘のない日常を描いた本巻でこそ、異世界ファンタジーという設定を生かしたものにしてほしいところだが、残念ながらそうはなっていない。無線通信やレーダーなどを〈導術〉と、爆撃機を翼龍と読み替えただけ、ということにもなりかねない。それではせっかく設定した舞台を生かし切っていないことになる。そこらあたりはもったいない。
異世界ファンタジーでは龍は神聖な存在として描かれることが多いが、本書では実に人間臭く、その日常生活がちらりと描かれたりもする。そのあたりをもっとふくらませてもらえれば、また違った雰囲気をかもし出すことができたのではないだろうか。
異世界ファンタジーと戦略シミュレーションの融合という実験の成否を握るのは、そこらあたりではないかと思うのだが。
(2001年2月3日読了)