読書感想文


ダブルブリッド IV
中村恵里加著
メディアワークス電撃文庫
2000年11月25日第1刷
定価550円

 「ダブルブリッド III」の続刊。
 かつて優樹によって倒されたはずの高橋幸児が生き返った。彼は優樹同様〈アヤカシ〉と人間の間に生まれた〈ダブルブリッド〉であったが、その生態を調べるため、実験体として生き返らされたのである。しかし、脳に損傷を負った高橋は記憶を失ってしまっていた。行方不明になった高橋を探すように命じられた優樹だったが、彼女は見つけた高橋をなぜかかくまう。高橋が再び優樹に危害を加えることを危惧する山崎は、しかし、上司である優樹の命令に従い、高橋の世話をしなければならなくなる。優樹を愛していることを自覚した山崎は自分の思いを彼女に伝えるが、彼女は彼の想いを理解できない。やがて高橋は徐々に記憶を取り戻し、優樹を傷つけたいという欲望を抱き始める。高橋と優樹の戦いに決着がつく時、山崎の果たす役割は……。そして、すれちがう優樹と山崎の想いの行方は……。
 本書で作者が描き出してるのは、文化の違いというものを無視して相手を自分と同一の価値観を持つと思い込み、その価値観を押しつけることの愚かさ、なのかもしれない。優樹が自分を害するかもしれない高橋をかばう理由、そして山崎と優樹の別離の理由、全てがそこから発している。1作ごとに内容を深めているこのシリーズの、いわば第1部完結にふさわしいテーマではないだろうか。
 もっとも、物語の冒頭から二人の別離を強調し過ぎてしまっていて実際に別離する段になった時、その寂寥感が減じていることは否めなく、小説の構成力という点では、まだまだこれからという印象を持ってしまった。別離は深く静かに進行しそして唐突にやってくる。その機微が描き切れたら、作者も本物なのだが。
 さらに、これまでの巻で伏線として登場していた人物画そのベールをとうとう脱ぐのだが、スケールを大きく見せようとしてかえって安っぽい感じになってしまっているのも惜しい。本書のようなシリーズでは、あまり絶対的な力を持つ敵役を登場させるのは得策ではないように思うのだが。
 とはいえ、全体に漂う重苦しいトーンなど、読者を引き付ける魅力は十分にある。第2部ともいえる次巻以降、どのような世界を展開していくか、楽しみである。

(2001年2月6日読了)


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