読書感想文


若草野球部狂想曲 2 クイーン・オブ・クイーンズ
一色銀河著
メディアワークス電撃文庫
2000年11月25日第1刷
定価590円

  「若草野球部狂想曲 サブマリンガールの続編。
 甲子園優勝校との練習試合に勝った若草学園男女混成野球部の次なる相手は、全国高校女子公式野球大会の優勝校、白桜学園。ここには西宮光児の幼馴染みで、サイドスローからクセ球を投げ込む月山小夜美がいて、光児は対戦に気乗りがしない。案の定、光児になれなれしく接する小夜美に対し、エースの文月真由実たちは嫉妬にも似た感情を覚え、精神的に不利になる。しかも、白桜のキャプテン早坂雪乃は、詳細なデータをもとに頭脳的なプレーで相手を倒してきている。雪乃の作戦にまんまとひっかかった若草ナインたちに動揺が走る。怪我で代打でしか出場できない光児が打った起死回生の一打の行方は……。
 全巻同様、野球の醍醐味を知悉した作者による、正統派のスポーツ小説。特に今回の相手は、タイガース野村監督のめざす野球を体現したような野球をする。これに対して奇襲戦法でかからなければならない若草チームの作戦の対比の妙味が見どころ。
 コメディタッチの味付けも、本巻ではさほど気にならない。それは、その味付けは読み手に対するサービス以外の何物でもなく、きちんと「野球」という競技の面白さを伝えたいという作者の思いがテーマとして作品を心棒のように貫いているからだろう。
 できれば、次はプロ野球を舞台にした作品を読んでみたい。それだけの野球知識と愛情を作者に感じるからである。

(2001年2月10日読了)


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