読書感想文


リングテイル4 魔道の血脈
円山夢久著
メディアワークス電撃文庫
2001年2月25日第1刷
定価530円

 「リングテイル3 グードゥー狩りの続刊。〈凶運のチャズ〉篇が本巻で完結。
 盗賊チャズは頭目であるゴヴァナンに叛旗をひるがえす。ゴヴァナンが求める〈死の谷〉の霊骨を奪わせないようにチャズとボーソ、そして魔道師の卵マーニたちで先回りしてゴヴァナンを待ち受け、倒してしまおうとするのである。その裏には、ゴヴァナンが隠していたチャズの生い立ちの秘密をチャズ自身が思い出したという理由もあった。一方、魔道王スウァルタは剣士ホリンを擁してゴヴァナンを滅ぼし、オク=トゥムの地を平らげる最後の手を打ちに出た。最後に笑うのはチャズか、ゴヴァナンか、そしてスウァルタか。マーニは時の円環にはまり込んだまま、もとの世界には戻れないのだろうか……。
 極端に言えば、頭がよくて人をうまく利用しかつ強力な能力を持つものが勝つように世の中はできているというのが結論だったようである。それではカタルシスがないではないかという気がしないでもないが、異世界ファンタジーが作者の創造した世界の歴史小説だと考えるのならば、当然の帰結というべきなのだろう。
 結局、マーニを過去に送り込んだものの目的はわからずじまいで終わる。ただ、本シリーズの場合、今後もマーニがいろいろな時代に飛ばされて様々な経験を積むという展開になるだろうから、それは本シリーズ完結まで明かされることはないのだろう。
 しかしまあ、デビュー作からこのような途方もない構想のシリーズを始めるのだから、驚いたものだ。作家としては引き出しが多いにこしたことはないと思うのだが。そんな心配を私がしても仕方がないか。ともあれ、長い歴史をたどるマーニの旅は始まったばかり。次のエピソードを楽しみに待つことにしよう。

(2001年2月17日読了)


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