読書感想文


星間群龍伝 IV 目覚めの時
羅門祐人著
エンターブレイン A−NOVELS
2001年3月14日第1刷
定価880円

 「星間群龍伝 III 時の行方」の続刊。
 UTI軍の聖蓮に対し、皇太后里亜は連邦本土防衛艦隊を率いるワルター艦長に開戦の突破口を与えるよう示唆する。この既成事実から、避戦派の議員を黙らせようとしたのだ。しかし議会はシュレンブルグ副議長の画策したクーデターにより制圧され、連邦はUTIに降伏する形で聖蓮の指揮下におかれることになる。一方UTIでは北河光輝が父康充郎の後継者として名乗りを挙げ、軍事権を掌握しようとしてコンピューターにアクセスしたところ、康充郎の仕掛けていたガードが働き、UTI全体に張りめぐらされていたネットワークがダウン、康充郎は死亡し、光輝も命を落とす。キースとシオンの混成軍はUTIを制圧し、ここに連邦とUTIは入れ代わるように新たな政治体勢をとることになる。皇后ライアやレオンたちは予定通り連邦の支配から脱し、新天地におもむく。しかし、シオンは敢えて連邦に投降する。シオンに自分の配下になることを迫る聖蓮。シオンの決断は……。そして参謀カミーラの選択は……。
 物語は急転直下、新たな展開に入った。ここらあたりのテンポの速さは前巻とあわせて読むと実に緩急をうまくつけていると感心させられた。独裁者の性格づけなどをうまく利用した形で政変が起こるようにしているところなど、架空戦記を多数書いている作者ならではのシビアな視線を感じさせる。さらに、経験を積むことによって成長する主人公、というだけでなく、持って生まれた資質というものを成長の要素にとりいれるところも心憎い。
 主人公にはまだまだ試練が与えられそうだ。次巻以降でその試練をどう克服していくかが楽しみである。

(2001年3月10日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る