読書感想文


【続】[聞書き]寄席末広亭 【席主】北村銀太郎述
冨田均著
平凡社ライブラリー
2001年2月10日第1刷
定価1000円

 [聞書き]寄席末広亭【席主】北村銀太郎述の戦前編。
 席主北村銀太郎翁を語り手とし、大工の棟梁だった席主がなぜ演芸の世界に踏み込んでいったか、その戦前の足取りを追う。
 若い頃は娘義太夫にいれあげ、吉原、州崎で花魁と遊ぶ。結婚と同時に妾をかこい、遊びは統べてやり尽くした男の最後の道楽が寄席の席主だったのだ。その色男ぶりもさることながら、そうやって身につけた人間を見抜く力が北村席主の最大の武器だったであろうことは想像に難くない。そして、席主の口から語られる道楽の数々は、同時に明治から大正にかけての風俗史となっていて、非常に貴重な証言なのである。
 本書はタイトルから想像されるような演芸史の本ではない。明治男の生きてきた足取りをたどることにより、この国から失われたもの、得たものを教えてくれる。
 もっとも、席主の思い出はかなり美化されているであろうし、席主のような生き方を誰もができたわけでもない。そこらあたりをよく含んで読むと、「道楽」に人生を賭けるということの面白さ、そしてそこについてまわるリスクなどが見えてくる。そして、そのような「道楽」をする人間を許容できた時代が日本にあったのだということもわかってくる。
 こんな「道楽」のできる身分になりたいものだと、ちょっと羨ましく感じてしまった。

(2001年3月16日読了)


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