読書感想文


牡丹の眠姫
崑崙秘話
紗々亜璃須著
講談社X文庫ホワイトハート
2001年4月5日第1刷
定価650円

 「沈丁花の少女」に続く、三部作の第2冊目。
 狐精を倒すために人間界に降りた瑞香と楊ゼン。そこに瑞香を姉と慕う元気者の那咤も着いてきて、まずは狐精の弱点を見つけるための手がかりを探し始める。狐精が霊珠を手に入れるための秘密の場所を見つけた彼らは、そこで妹分の雉精と出会う。雉精は狐精のもとに逃げ帰り、狐精がとうとう瑞香のもとに姿を現す。瑞香は狐精の仕掛けた罠にかかり、身動きがとれない状態に。楊ゼンたちはいったん仙界に戻り対策を練り直すが、なんと狐精は突如仙界に妖怪たちを連れて攻め込んでくる。狐精の狙いはなにか。そして、瑞香は自由を取り戻すことができるのか……。
 本巻では狐精の動きが活発になる。どちらかというと、敵役である狐精が主役となったかのようだ。敵に魅力がないと、物語が面白くならないのは当然のことであるが、ここまで敵役が中心となって物語が進むというのも珍しい。逆に主役たちがもうひとつ光ってこないうらみも残る。
 とはいいながらも、ストーリー展開が速く一気に読ませる力を感じた。二転三転するストーリーをきっちり描き切ったあたり、作者が一作ごとに力をつけていることを感じさせる。
 いよいよ次巻で完結。おそらく恋の成就という形で完結するものと予想されるが、そこに至る過程をどのように描いていくのかが楽しみである。

※正しくは口那の字を使用するが、外字となるので置き換えています。

(2001年4月12日読了)


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