読書感想文


EDGE3〜毒の夏〜
とみなが貴和著
講談社X文庫ホワイトハート
2001年4月5日第1刷
定価570円

 「EDGE2〜三月の誘拐者〜の続刊。心理捜査官大滝錬摩は、新たに警察の専任担当者となった松並から喫茶店の砂糖壷に連続して薬物が混入されていた事件に関して操作協力の依頼を受ける。依頼を断わる錬摩だったが、続いてドラッグストアで青酸ガスが発生された事件現場に居合わせたことから、否応もなく事件に関わることになる。青酸ガス事件では松並の親友が被害にあっており、その人物をめぐる人間関係、そして自分の過去を知ってしまった宗一郎との関係悪化など、さまざまな要素がからみながらも、錬摩は少しずつ加害者の人間像を絞り込んでいく。犯人が事件を起こすことで訴えようとしていたものは何だったのか……。
 今回は事件解決の過程はそれほどドラスティックな展開ではないが、その分人間関係の書き込みに優れた腕を見せている。特に、犯人の心理を最初からかなり書き込んで読み手に提示し、読み手は犯人を知っているが主人公がなかなかそこまで到達してくれないもどかしさでページをめくる手を止めさせないところが憎い。作者がさらにうまさを身につけ、作家として力をつけたと感じさせる。
 さらに、シリーズとしては宗一郎と錬摩の関係の変化をきちっとストーリーに折り込んでいる。錬摩自身の動揺がストーリー展開に微妙な影響を与えるだけに、ここらあたりもうまくいっている。今後、新たなエピソードの中で宗一郎の占める割合いが大きくなりそうなだけに、次巻以降も楽しみである。
 とにかくこのシリーズはもっともっと話題になってもよいものだと思うし、本巻もお薦めの一冊であることは間違いない。

(2001年4月14日読了)


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