読書感想文


深き水の眠り
まどろみの闇

毛利志生子著
集英社コバルト文庫
2001年4月10日第1刷
定価495円

 「深き水の眠り」の続編。
 〈水蛇の巫女〉名和沙月は、〈水蛇〉の吼を探していた。母が予約したリゾートホテルへの道に迷った沙月は地元の若い男性にだまされて別なホテルにたどり着く。そこは廃業してしまったホテルで、その男、月島貢が彼女に迫る。彼女を救ってくれたのは地元の酒屋の娘、沢崎美鶴であった。沙月は美鶴に〈水蛇〉と思われる白い影がつきまとうのを見、酒屋を手伝うという名目で美鶴の家にしばらくやっかいになることにする。美鶴の親友がそのホテルで焼死した事件にからみ、月島が水死、その友人の丸井も刺殺された。沙月を犯人と決めつける刑事佐々倉。嘘の自白を強要される沙月を助けたのは成瀬玻瑠佳と静河だった。一連の事件の影に美鶴についている白い〈水蛇〉があると感じた沙月。しかし、真犯人はそんな沙月を次のターゲットにする。危機に陥った彼女を救ったのは……。
 ミステリ仕立ての伝奇アクション。特に真犯人の歪んだ心理などの書き込みに力が注がれている。読者対象を考えてのことか本巻でもストーリー展開は比較的単純で、人物像の掘り下げ方も典型的になりがちである。それはそれでわかりやすく、またスリリングな構成で面白くは読めるが、この作者のものとしてはもう一つ深いものを望みたいところだ。人物描写などで光るものがあるだけに、さらに小説としての完成度を高めていく方向でシリーズを展開していってほしいのだが。
 次こそは『カナリア・ファイル』に匹敵する大がかりな作品を読ませてほしいのである。

(2001年4月18日読了)


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