「姫神さまに願いを〜巡恋夏城 〜」に続くシリーズ第8弾。
カイとテンの二人は、尾張の国へ。どこかから逃げ出してきた竹千代という少年と出会いその素性を探ろうとするが、本人が明かそうとしない。上野晴明社に滞在しながらその手がかりを得ようとして市に出かけたカイは、そこで春をひさぐ吉法師という女性に出会う。彼女は実は男性で、カイの持つ草薙の剣を奪おうとする。吉法師の強い呪力の前にはテンの神としての力もままならない。ついに吉法師の手に渡った剣をめぐり、虚々実々のかけひきと激しい呪術合戦が繰り広げられる。安倍晴明の助力とともに剣を取り返そうとする二人の前に、吉法師の意外な正体が……。
このシリーズも本書で物語が大きく動いたというところだ。後に織田信長となる吉法師の呪力、そしてカイとの因縁などがそれぞれの宿曜星の運命をからめながら描き出される。おそらくは今後、カイとテンは激しい戦国絵巻の中に否応なく投げ込まれていくのだろう。そして、それにふさわしく本書のストーリー展開もこれまで以上にシリアスなものになっている。
となると気になるのは、第1巻から続いているカイとテンのコミカルなコンビという設定である。物語が少女向け時代コメディのイージー・ゴーイングを超えていくとともに、主人公たちの関係も重いストーリーを持ちこたえられるだけのものにならなければならない。つまり作者の構想がふくらんできているのでタッチも変わらざるを得なくなっているのだ。シリーズを通してこのような形で変わってしまうことが果たして良いことなのか。シリーズ開始当初に感じた「軽さ」に対する違和感がここにきてはっきりと露呈してしまったことになる。
そのギャップをどのように埋めていくのか、今後はその点にも注目しながら読んでいきたい。
(2001年4月24日読了)