ザ・ドリフターズのリーダー、〈長さん〉こといかりや長介の自伝。疎開した静岡にそのまま住んで、静岡でハワイアンバンドに入った芸能界入りのきっかけから、ギャグをやりたくてジミー時田のもとを離れ、桜井輝夫とザ・ドリフターズに入ったいきさつ。ザ・ドリフターズからジャイアント吉田たち4名が抜けてドンキー・カルテットを結成し、加藤茶と二人きりになったピンチ。荒井注、高木ブー、仲本工事らを急遽加入させてしのいだそのメンバーがドリフとして人気絶頂となるまでの過程。お化け番組『8時だョ!全員集合』、『ドリフの大爆笑』の裏話。荒井注と志村けんが交代した時の苦心。『全員集合』終了後、俳優として脚光をあびたことへの戸惑い。そして現在も持ち続けるドリフへの愛着……。
自慢話をするわけでもないし、暴露本というわけでもない。ただ淡々と自分の足取りを振り返るだけ。それがいい。ただ自分のやってきたことへの自信というものが行間からにじみ出てくる。
芸能史の資料として考えた時、フィルモグラフィーやディスコグラフィーなどが添付されていたら、と思わないでもない。クレイジーキャッツの研究はマニアなどの手によってかなり進められているが、ドリフについてはあまりまとまったものがない状態である。本書がそれを埋めるだけのものになっているとはいえないけれど、それでもドリフの足跡をコンパクトにまとめたものが少ないだけに、「8時だョ!全員集合伝説」(居作昌果)と並ぶ貴重な証言であることに違いはない。
ドリフのコントのポリシーなどを知ることにより、なぜドリフが時代の寵児となったのか、その理由の一端に触れることができる。著者ならではの好著といえるだろう。
(2001年4月29日読了)