読書感想文


Prayer of Shine 姫神さまに願いを 光の祈り人
藤原眞莉著
集英社コバルト文庫
2001年5月10日第1刷
定価495円

 「姫神さまに願いを〜血誓の毒 〜に続くシリーズ第9弾。
 本巻は平安時代編。主人公はカイとテンの前世での息子である安倍晴明。藤原忠平の命により、都に流行する傀儡使いを監視することになった若き晴明だが、傀儡使いの法師、道真(どうま)は菅原道真の怨霊に従い都を壊滅させることを狙う強敵であった。晴明を邪魔だと感じた道真は晴明の父安倍保名を殺害する。保名の命を救った晴明は、道真を倒す決意をする。しかし、道真は宮中に入り込み天皇の母親を惑わせ晴明を尾張に配流するように働きかける。都から切り離された晴明はどのようにして道真を倒せばよいのか……。
 戦国時代編を本編とすれば、これは外伝。それだけにカイとテンのコミカルなやりとりを出す必要はなく、ほとんどシリアスなタッチで書き進めることができている。法師道真の正体、そして息詰まるような厳しい戦い、配流先での晴明の成長、ラスト近くの大胆な展開など、これまでのシリーズの中でも最も読みごたえのある傑作になっている。晴明を扱った小説は数多いが、その中でも独自の持ち味を出していて新鮮であり、なおかつまだまだ晴明ものの可能性を広げていくだけの力を感じた。
 今後は時代伝奇小説の書き手としてヤングアダルトの枠を超えた活躍を期待したい、そう感じさせる1冊。これまでこのシリーズを読んでいない人にもお薦めしたい。そして、作者の将来性をぜひ感じとっていただきたい。

(2001年5月12日読了)


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