読書感想文


姫神様に願いを 〜月の碧き耀夜 前編〜
藤原眞莉著
集英社コバルト文庫
2001年6月10日第1刷
定価438円

 「Prayer of Shine 姫神様に願いを 光の祈り人に続くシリーズ第10弾。
 本巻は再び戦国時代に舞台を戻し、カイとテンが異郷から来た謎のキリシタンと関わっていく物語となった。伊勢神宮の近くで病に苦しむ女性を救う何者かがいるという噂を耳にした二人は、その正体を突き止めようとする。その人物は烏天狗を配下にしているというのだ。その人物はカグヤと名乗り、月から来たと自称する。キリシタンの呪法を使い、カイを傀儡にしようとするカグヤ。それに対してカイを救おうとするテン。カグヤの背後に見えかくれする鎌倉時代から生き続ける大天狗、文覚の狙いは何か。新たな試練にぶちあたった二人は……。
 カグヤという新しい敵の存在感が際立っている。単に異教の技を操る強敵というだけではなく、この人物の存在に関して裏付けをし、リアリティを持たせることに成功しているからだ。ストーリーがシリアスになり、もともとのコミカルな味が邪魔になってきたのだろう、カイとテンのやりとりなどに必ずついてきたアチャラカ的な描写が格段に減った。それは私としては望ましいところなのだが、シリーズを貫くコンセプトとしては、作者としてはどうなのだろうか。あるいは、本来の対象である少女小説の読者はどう感じているのだろうか。
 まあ、この路線でいってくれれば私個人は嬉しいし、今後もこの形で本格的な時代伝奇小説の書き手となることを期待しているのだ。謎がクライマックスに達したところで後編に続く。月からの敵というSF的なアイデアをどのような形で着地させるのかが楽しみである。

(2001年6月17日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る