読書感想文


東方ウィッチクラフト −垣根の上の人−
竹岡葉月著
集英社コバルト文庫
2001年6月10日第1刷
定価438円

 中学生の観凪一子は隣接する御堂学園の高校生、滋賀柾季に憧れ校舎から双眼鏡でウォッチングする毎日。親友でクールな堀江朔実に呆れられながらもウォッチングは止まらない。ある日御堂学園の屋上で犬と戦う柾季の姿を見た一子は彼を助けようと猛烈な勢いで現場に駆けつける。なんとそれは柾季が飼い犬を使い魔にしようとしている現場だった。彼は魔女の末裔で、真剣に魔女になる修業をしていたのだ。そして、一子は犬の代りに使い魔になってしまった。かくして彼女は世間を騒がせている路上強盗事件の解決に駆り出されることに。一子と喧嘩した朔実は一人で映画館に行き、そこで何者かに誘拐されてしまう。朔実を探し求める一子。そして連続強盗事件の犯人達が見つかって……。
 魔女になりたい男の子と心ならずも使い魔となってしまった女の子が巻き起こすコミカルな騒動を軸に、繊細な思春期の少女の心情を描き出した作品。と書くと矛盾しているようだが、作者はこの二つの異なるテーマを違和感なく描き出すことに成功している。これはデビュー作「ウォーターソング」で示されたテーマを継承したものでもある。さり気ない人物描写がその人物の性格などを生き生きとつむぎだし、読み手を惹きつける。ここらあたりが作者の真骨頂、なのかもしれない。コミカルな部分も独りよがりにならず、小気味よい味つけとなっている。今後の展開が楽しみなシリーズがまたひとつ増えた。

(2001年6月17日読了)


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