読書感想文


モザイク I I 少年たちの震える荒野
中井紀夫著
徳間デュアル文庫
2001年5月31日第1刷
定価590円

 「モザイクI 少年たちの震える荒野に続く第2巻。
 M震によって家を失いPTSDに苦しむ男、塚本。彼は達っあんという男性ともに廃品回収で糊口をしのいでいる。そこに野球帽にサングラスの少年、リュウも加わる。塚本は〈星なき荒野〉教団から入信の勧誘を受け、リュウの存在を信者に打ち明けてしまう。〈星なき荒野〉は塚本にリュウを連れてくるよう依頼する。一方、リュウを探し疲れた大輔は薬物に手を出してしまう。リュウの情報をつかんだ唯花とエリーは教団に潜入して捕らわれたリュウを救い出そうとする。〈星なき荒野〉の教祖蓮沼無熱はリュウの潜在的な能力を引き出すために拷問を繰り返す。拷問の結果、リュウに現れた変化とは。そして、大輔たちの救出作戦は成功するのか。
 本巻では大災害によるPTSDというテーマを軸に、人間の持つ弱さをじっくりと書き込んでいる。それは塚本や達っあんのような被害者だけではなく、被害にあっていない南部という町の実力者や地上のものを全て破壊しようとする蓮沼無熱の心理にもそ萌芽がある。そういう意味ではこのシリーズは人間の弱さというものをM震という設定を使って描き出そうという試みである。その中から浮かび上がってくる人間関係など、不確定で不安定な要素が少しずつクローズアップされてきている。
 やっと作者が往年の陰影を取り戻してきたかという感じがしている。ここにもう少し頽廃的な色が濃くなってくれればさらに面白くなってくるだろう。少しずつ楽しみの増えてくるシリーズということになるかもしれない。次巻では変貌したリュウが作品世界にどのように影響をおよぼしていくかが焦点になってくるだろう。楽しみである。

(2001年6月22日読了)


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