「フェイクスイーパー」に続くシリーズ第2巻。
「高原御祓事務所」の所長で霊視の力を持つ高原透と腹違いで除霊能力を持つ矢野真吾の軽妙なやりとりを中心にすえたコミカルなタッチの短編集。
「休日営業inホスピタル」は入院中の真吾が出会った怪事件を描く。なぜか見舞い客ばかりを狙う悪霊が出現。透が見つけたのはひと昔前のスタイルをした女の子の霊だった。女の子の霊が見舞い客からエネルギーを吸い取るその理由は……。
「a quatre
mains」は透の大学の同級生、樋口恭子の従妹、泉がピアノの発表会直前に霊に憑かれて手首をいためる事件を描く。泉の才能に嫉妬する者の正体を探りだした時、お互いがとったそれぞれの方法とは……。
「よくない木曜日〜あるいは、実にささやかな序?〜」は銀行強盗に遭遇し人質となった透を助ける真吾の活躍を描く。この活躍で真吾に目をつけた者とは……。
本書を読むと、この物語がどちらかというと「癒し」を狙ったものであることを感じる。彼らが出会う霊は悪意から生まれたものではなく、人の心の弱さから生まれたものなのだ。そして、彼らもまた決してその霊を完全に倒してしまうのではなく、自分自身も傷つきながら事件を解決していく。そういった意味では単純なオカルトアクションではない。現代に生きる者の抱える傷つきやすい心を、霊と霊能者という道具立てを使って描いた青春小説なのである。
(2001年7月8日読了)