読書感想文


双星記 4 凍てつく月の戦い
荻野目悠樹著
角川スニーカー文庫
2001年7月1日第1刷
定価552円

 「双星記 3 遠すぎた星の続巻。
 敵地に着陸したランディスヴァーゲンは敵の歩兵に囲まれるが、奇策で窮地を切り抜ける。そして、かつて自分が所属していた地下組織の一員、コルトレーンに連絡をとる。一方、アル・ゴをめぐる宇宙艦隊の攻防戦ではサイゴーン軍の囮的な役割を押しつけられたメッサージュ軍の総司令官ラインバックがリュウガサキの指示により突如作戦を変更し戦線を離脱。サイゴーン本隊はベルゼイオンの艦隊に迎撃される。リュウガサキのとった意外な作戦。戦線は新たな展開を迎える。
 本巻でのアル・ヴェルガス側の内紛ともいえる政治的な駆け引きが面白い。ここで作者は本シリーズが人間ドラマであると同時に戦略ドラマであることをも指し示しているのだ。
 そんな中で極めて政治的な理由で提督に選ばれたと思われるランディスヴァーゲンの一見気まぐれとも思える行動は、主人公でありながらトリックスターとして物語を動かしている。そういう意味では帯に書かれている『ヒロイック・スペース・ファンタジー』という惹句は『アンチヒロイック』と書き換えてもよいくらいだろう。そう、本書の主人公は大石内蔵介や刑事コロンボの系譜をひくアンチヒーローなのである。

(2001年7月10日読了)


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