「秘神黙示ネクロノーム 1」の続篇。2年10ヶ月ぶり、久々の登場。
〈水〉のネクロノームの乗り手として選ばれた神足えりは米軍の基地に監禁され、ドクター・OWによって洗脳させられようとしてた。〈火〉のネクロノームの乗り手、後光院洋一は、〈空〉のネクロノームの乗り手、坊門啓の主宰する教団に監禁されていた。坊門の狙いは5つのネクロノームを破壊することにある。〈地〉のネクロノームの乗り手、名和公は脇屋光頼への嫉妬から出た憎しみのエネルギーによって覚醒し、えりを我が手におこうとえりの捕らわれている基地に攻撃をかける。ドクター・OWは自らの手で作り上げた人造ネクロノーム「オールド・ハリー」と激しい戦いを繰り広げる。そして〈風〉のネクロノームの乗り手として覚醒した光頼は、えりを助けようと戦いの場に向かう。おびただしい破壊と数知れぬ屍を乗り越え、ネクロノームたちが集まった時、何が起こるのか……。
巨大ロボットアクションとう枠組みにクトゥルー神話の要素を組み入れた、作者ならではの展開。ひとつひとつの要素に意味があり、軽く読みとばすわけにはいかない。この中身の濃さはヤングアダルト小説に対する挑戦ではないかとさえ思える。
本巻ではコンプレックスを憎悪に変え覚醒する名和公という人物の描写が印象的。主人公の光頼との対比が、ひとつのキャラクターの光と影というようになればさらに面白いのだが、オタクに対するネガティヴな面が強調され過ぎていて単純な悪役になってしまっているのは残念。
いよいよ次巻は完結篇。ネクロノームとそれらを統べる〈N〉という母神の関係が明らかになる時、どのようなカタストロフィが待ち受けているのか、評価はそれからである。
なお、シリーズものとしては異例の間隔で刊行された本巻だが、現在の出版のペースを考えると読者が入れ代わってしまっているくらいの間隔でもある。だからこそ前巻までのあらすじと登場人物紹介にもう少しページを割いてもよかったのではないだろうか。
(2001年7月17日読了)