「遥都」に続くシリーズ第4弾。2年4ヶ月ぶりの、待望のシリーズ再開である。
〈闇の神々〉との激しい戦いで、日本列島はサイパン沖に移動しその上空にはテニアン島が浮かんでいる。幻の島に住む者の助力でハワイに流れ着いた美枝と真知は「危機管理委員会」よりも先に幻の島の秘密を解きたいと願う。一方、京都に残った香流は天狗たちとともに丹後に行き最後の〈神官〉と戦おうとしていた。そして君之と雄斗は〈ビシマ〉の力を使い闇の神々との新たな戦いに備えている。美枝がハワイで耳にし、真知が「危機管理委員会」の医師から聞かされた〈美しき民〉とは何か。舞鶴で香流が遭遇した巨大な怪物の正体は……。
シリーズ再開にあたり、本巻はこれまでの3冊に登場してきた人物たちが現在どのような状況に置かれているかを中心に展開している。これまでに広げてきた大風呂敷をきっちりとたたむために、作者は周到な用意をしているなと感じさせる。本書に出てくる〈美しき民〉の伝説や新たな怪物などはその伏線であろう。もちろん、これまで積み重ねてきた内容との整合性を踏まえた上のものである。
まだ物語は動き出したばかり。2年4ヶ月という長い期間を置いての再開だけに、作者の中でどのように物語の構想がふくらんでいるのか、今後の展開に大いに期待できる滑り出しでもある。まずは、この壮大なシリーズが再開されたことを喜びたい。
(2001年7月18日読了)