読書感想文


ダブルブリッド VI
中村恵里加著
メディアワークス電撃文庫
2001年7月25日第1刷
定価550円

 「ダブルブリッド V」の続刊。
 警察と米軍が共同演習をするということでその標的役で協力することになった優樹たち〈アヤカシ〉。ゴムを使った模擬弾を使用するため危険性はないはずだったのだが、八牧と虎司の前に現れたのは完全武装した米軍兵士だった。二人を救いにいった優樹は、瀕死の虎司を前に、別人に変化していく。そして、演習に参加していた太一朗は〈アヤカシ〉と対峙した瞬間、驚くべき変貌をとげる。影の存在に操られるように繰り広げられる殺戮の果てに見えてきたものは……。
 本巻では〈アヤカシ〉の人間社会での位置を示すエピソードとなっているように感じられた。まず、演習の標的として〈アヤカシ〉が協力するという舞台設定。その〈アヤカシ〉たちに対する人間たちのおっかなびっくりの態度。確とした理由も示さず攻撃してくる米軍。全てが〈アヤカシ〉を人間がどのように見ているかを示している。
 ただ、ここでの米軍の描かれ方には不満がないではない。彼らがわざわざ人間に協力的な〈アヤカシ〉を殺戮する理由が明らかにされていないのである。エピソードとしては完結しているのだが、その点が今後の展開に対する伏線であったとしても、少し不自然である。さらにいえば、舞台を離島の演習場に設定したことによって、ストーリー展開が読みやすいということもこれまでのエピソードよりも単調な印象を受けてしまった。
 ラスト近くで急展開し次巻につないでいるけれども、アクションが派手であったり登場人物の描写が細かかったりする分、ストーリー自体の単調さが目立ってしまった。そういう意味では本書は長いストーリーのブリッジにあたるものであるのかもしれない。シリーズに人気が出てきて長期化すると必ず中だるみとまでは言わないがこういったブリッジとなる巻がはさまるものだから、それはそれでやむを得ないとは思うけれどね。

(2001年7月21日読了)


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