読書感想文


暗黒太陽の目覚め 上
林譲治著
ハルキ文庫ヌーヴェルSFシリーズ
2001年7月18日第1刷
定価700円

 「侵略者の平和 第三部 融合」の後日談となるシリーズの開始。
 宇宙都市オデッサに向かう貨客船〈フェニックス〉を〈宇宙犯罪組織龍党〉の艦隊が襲う。〈フェニックス〉には芸者園の女優、桜叶みさとがオデッサに派遣されるために乗船していた。自らの演技力で窮地を脱しようとするみさと。もう少しでオデッサに突入というところで〈龍党〉に捕捉されかける。そこを救ったのは宇宙の通信インフラを独占するマヤ設計局のフェルジナンドだった。オデッサをめぐって、代官の華表蓮蛇、筆頭与力のコーデリアはフェルジナンドやみさとと虚々実々の駆け引きを繰り広げる。マヤ設計局がオデッサを狙う理由は何か。そして、桜叶みさとの真の狙いは……。
 那國とエキドナの関係が微妙な均衡を保っているという設定でその緩衝地帯にある宇宙都市をめぐる政治的な攻防が本書の見どころ。特に個性的なキャラクターの桜叶みさとが印象的。彼女の所属する芸人を育成する「芸者園」が社会的に高い地位をもっているというアイデアがユニーク。これまでこういったタイプの物語で文化的な面に配慮したものはあまりなかったのではないかと思う。
 複雑に絡み合った人間関係と宇宙都市オデッサの設定がうまくかみあっている。この設定を下巻でどのように展開させていくのか、楽しみに待ちたい。

(2001年7月21日読了)


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