読書感想文


姫神様に願いを 〜月の碧き耀夜 後編〜
藤原眞莉著
集英社コバルト文庫
2001年8月10日第1刷
定価476円

 「姫神様に願いを 〜月の碧き耀夜 前編〜に続くシリーズ第11弾。
 カイとテンの前世での子どもである安倍晴明。西洋人である耀夜はその晴明の転生した姿であった。しかし、神として祭られる晴明は転生することのない呪をかけられている。その秘密を握っているのは晴明自身。カイはその秘密を探るために耀夜と対峙する。耀夜自らの口から語られた出生の秘密とは。そして、耀夜が仇とつけ狙うキリスト教の宣教師達との対決の結果は……。謎に満ちた耀夜の正体が今明かされる。
 戦国時代におけるキリスト教布教の状況など史実をしっかりと押さえた上で独自の解釈を加え、虚実ないまぜになった世界を形作っている。耀夜の正体など、歴史好きの読者なら思わずにやりとしてしまうだろう。ここらあたり、作者にかなり余裕が出てきたということなのだろう。
 基本線であるコミカルなタッチは本巻でも残しているが、それは最低限度にとどめ、バランスよく配分されている。ここらあたり、やっとペースをつかんだということなのだろう。若手の作家がこうやって一作ごとに成長していくのを見るのはとても楽しいことである。
 かなり長期化したこのシリーズであるが、カイが史実ではどの人物にあたるのか、歴史上の舞台に登場した時、どのように動いていくのか。その行く末まで見極めてみたくなってきた。

(2001年7月29日読了)


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