「秘神黙示ネクロノーム 2」の続篇。完結篇である。
5機のネクロノームとその乗り手が出揃って、彼らの母機である〈N〉が覚醒する。〈N〉の目的はネクロノームの力を結集し、超古代に彼女がそうしていたように、古の神を守るために人類を滅ぼすこと。5人の乗り手たちはそれぞれが属する組織の思惑にからめとられたり、あるいは自分の欲望を増幅させたりしていて〈N〉に対抗できるだけの力を持ち得ていない。光頼とえりはそんな中で公の肥大した欲望を浄化し、啓の野望を人類救済へと変えていこうと努力する。5人の力は5体のネクロノームのもとに結集することができるのか。そして、人類の運命は……。
ヤングアダルト小説が一種のビルドゥングス・ロマンとなるということは何か暗黙の了解となっているようで、クトゥルーをモチーフにした巨大ロボットものという独特の設定である本シリーズもその枠の中で物語が進行していった、いや、積極的にそのように展開させていったという印象を受けた。結末は読者の想像にゆだねる形になっていることだけが単純な成長物語と感じさせない作りにはなっているのだが。
となると、本書に込められた作者の意図はなんだったのだろうか。おそらくは、ヤングアダルト小説の読者層をクトゥルー神話へ導いていこうという啓発的なものがあったのに違いない。ストレートなストーリー展開や、単純化されたキャラクター設定などは読みやすくわかりやすい。そこらあたりに作者の意図が透けて見える。
ただ、かつて作者がヤングアダルト文庫で活躍していた時代そのままの感触で書かれている点が気にはなる。あの頃とは読者が求めているものが変化していると思うのだが。果たして作者の意図は若い読者に伝わったであろうか。
(2001年8月18日読了)