読書感想文


炎華の断章
封殺鬼 23
霜島ケイ著
小学館キャンバス文庫
2001年10月1日第1刷
定価533円

 「忌みしものの挽歌」に続くシリーズ第22巻。
 〈無外〉の地に潜伏する身となった二人の鬼、弓生と聖。その行方を求めた佐穂子は秋川の家を飛び出して鬼無里に向かう。紅葉の力を頼り、二人の居場所を探すために香住千冬とともに東京へ。一方、成樹は自分に宿る四天鬼の力を使い、とうとう二人の居場所を見つける。天狗は成樹をさらい、人質として鬼たちを誘い出す。鬼たちを利用しようとする高良は中央の御師たちに〈無外〉の者であることを知られいったん訣別する。〈無外〉の地を離れた二人の鬼は天狗の呼び出しに応じて新宿へ。天狗によって妖気に満たされた新宿に鬼が、佐穂子たちが、三吾が、そして天狗が集結し、戦いは新たな局面に。
 天狗の企みを中心に、これまで活躍の場があまりなかったキャラクターの動きを軸に物語は進む。柿色の着物を着た鬼や高良の目的はまだこの巻では明らかにはならないが、少しずつヒントを小出しにしているのは憎いところ。ただ、多様な人間関係とその動きをきっちりと描こうとして物語の動きが遅くなっているのは、読者としてはもどかしい。確かに入念に書きこむことにより物語世界の奥行きが深まることは事実だが、できればもう少しストーリーの進行をスピードアップできないものか。
 いよいよ激しい戦いが始まるので、次巻では一気にストーリーが展開することが期待される。

(2001年9月8日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る