読書感想文


陰陽師 鬼一法眼 弐之巻
藤木稟
光文社 カッパノベルス
2000年12月20日第1刷
定価819円

 「陰陽師 鬼一法眼 壱之巻」の続巻。
 娘の入内のことばかり考える鎌倉将軍源頼朝、東国武士の束ねについて悩む北条政子、頼朝を追い落として自らが東国の首領となろうとする北条時政とそれをけしかける若い妻、牧の方。そして、彼ら幕府中枢を取り囲む武士たちも自分たちの思惑を胸のうちに秘めながら、陰謀を重ねていく。しかし、これらは全て後白河天狗と牛若天狗が仕組み、武士たちの心を操って起こしていたことなのであった。鬼一法眼こと龍水は水鳴太夫と村上兵衛を京に使いに出す。京では後鳥羽上皇が実権を握り、不二尼なる謎の尼僧がその影で動いていた。不二尼の陰謀で水鳴もまた陰謀の中に組み込まれていってしまう。やがて天狗たちの標的は龍水に……。
 まだ鬼一法眼の性格がはっきりしない。それよりも脇を固める人物と鎌倉時代初期の京都対鎌倉という図式をうまく利用した展開などに面白さを感じる。人間の欲望とそれをうまく利用する天狗たちという関係がはっきりしていて、それを裏付ける史料などもちゃんとポイントを押さえているようだ。なによりも鎌倉幕府内の人間関係が実にわかりやすく描かれていて、ストーリーに怪異が混ざっていくのに無理がない。ここらあたりの必然性の持たせ方はミステリもよくする作者らしいところだろう。
 だから、鬼一法眼と天狗たちが直接対峙することになりそうな次巻が楽しみである。

(2001年9月15日読了)


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